【ハイキュー!!】矢印の先に、俺(私)はいない【R指定】
第11章 The Night I Chose You
照れて下を向く仁美。
黒尾はその横顔を見るだけで胸がざわつくくらいに愛しかった。
ああ、俺……この子の全部がほしい。
欲は静かに熱を帯びていく。
でも今日は押しつけない。
仁美が自分に向き合おうとしてくれているのを黒尾は感じている。
だからこそ、この時間を大切にした。
「仁美、次どこ行きたい?」
「クロの行きたいところでいいよ」
「……じゃあ、歩きながら決めよ」
手をつないで街の交差点を渡る。
冷たい仁美の髪を揺らすたび、黒尾の心臓はまた忙しくなる。
彼女を幸せにできるなら、何だってする。
そんな気持ちで胸がいっぱいだった。
映画館の出口を出たあとも、黒尾は仁美の手を離さなかった。
夕方の光が街を薄桃色に染め、人波の中でも2人だけは違う世界にいるようだった。
「仁美、今日……すごく嬉しい。」
「……よかった。わたしも、楽しいよ。」
そんな言葉を交わすたび、黒尾の胸は満たされていく。