【ハイキュー!!】矢印の先に、俺(私)はいない【R指定】
第11章 The Night I Chose You
黒尾は仁美と並んで歩くのがただ嬉しかった。
何度も手をつなごうとして、そのたびに「今日は強引じゃない自分で」と言い聞かせて手を引っ込める。
けれど、仁美が小さく袖を摘んだ瞬間、黒尾の心臓は跳ねた。
「クロ……こっち、歩きにくくない?」
その仕草が、遠回しな“つないでもいいよ”に見えた。
黒尾は堪え切れず、ゆっくりと仁美の手をとった。
指と指が自然に絡まる。
仁美の手は少し冷たくて、黒尾の体温に触れた瞬間、微かに震えた。
「……仁美 の手、かわいい。」
思わず漏れた声に、仁美は一瞬だけ目をそらして、頬を赤くしながらも握り返してくれた。
黒尾の胸は、しみ込むような幸福感で満ちていた。
こんな穏やかな時間を、自分がもらっていいのかと思うほど。
2人で映画を見て、その帰り道にソフトクリームを半分こして、仁美が甘いもので口元を汚したら黒尾はつい拭き取ってしまった。
「……クロ、そんなの恥ずかしい。」
「いいじゃん。俺の仁美なんだから。」