【ハイキュー!!】矢印の先に、俺(私)はいない【R指定】
第11章 The Night I Chose You
……そう何度も誓っていた。
だが、角を曲がって近づいてくる影を見つけた瞬間、その決意は煙のように消えた。
仁美が足を止め、少し緊張した声で名前を呼ぶ。
「……クロ。」
ふわ、と胸の奥の何かがほどけた。
その声。その顔。
その、頬を赤らめた表情。
黒尾の理性は一瞬にして吹き飛んだ。
「……来たじゃん。」
言葉より先に体が動いていた。
黒尾は仁美の腕を軽くつかみ、ためらいがちに、でも抑えきれずに抱きしめる。
ぎゅっと力を込めてしまったのは、会えなかった昨日が苦しかったから。
少し気まずそうな仁美、それでも黒尾の胸元に小さく手を添えてくる仕草。
その全部が可愛くて、黒尾の息は熱を帯びる。
「顔……赤いよ、仁美。……かわいい」
黒尾の声は震えていた。
待つなんて無理だ。
彼女が目の前に立って、自分の名前を呼んで、胸の奥を全部ゆらすこの状態で。
──今日、仁美はきっと大きな決意を持って会いにきてくれた。
その事実だけで黒尾は壊れそうに嬉しかった。