【ハイキュー!!】矢印の先に、俺(私)はいない【R指定】
第2章 Shifting Distance
「そういえば、研磨のクラスは何やるの?」
仁美は看板を壁に立てかけながら、汗を拭うように手の甲で額をなぞった。
「うち? ……アプリゲーム。」
「アプリゲーム?」
仁美は思わず目を丸くした。
「え、それって……クラスで作るの?」
研磨は無造作にポケットに手を突っ込んで、少し気だるげに答える。
「うん。クラス全員じゃないけど、情報系のやつらで。俺も少し手伝った。」
「……研磨が?」
仁美の声が一段高くなる。
驚きと同時に、まっすぐな尊敬の色がその瞳に宿っていた。
研磨はその視線を受けて、少しだけ肩をすくめた。
「まあ……ちょっとだけね。」
ほんの短いやりとりのあと、二人の間に小さな沈黙が落ちる。
廊下のざわめきの中で、二人の空気だけが少し静かだった。
その沈黙を破ったのは、仁美だった。
息を小さく吸い込んで、顔を上げる。
「……ねぇ、文化祭の後夜祭で、今度こそクロに告白する。」
声はいつもより小さく、でもはっきりしていた。
研磨の指先が、ほんの一瞬だけ止まる。