【ハイキュー!!】矢印の先に、俺(私)はいない【R指定】
第9章 Cling to Me, Even If it Hurts
一斉に視線が雪崩のように押し寄せる。
拍手。歓声。スマホのシャッター音。
浮かれた声が弾むとは裏腹に、教室の空気は重く、揺れていた。
「え、ほんとに?いつから?」
「ずっとお似合いだと思ってた!」
笑顔。祝福。羨望。
その中に、針のような視線が混ざる。
「……いいよね、恋愛できて。」
「こっちは受験で死にそうなのに。」
「推薦って気楽だよなぁ。」
聞こえるように囁く声。
ページを荒くめくる音。
机を叩く鉛筆の先。
——祝福と妬みが交互に刺さる。
「すごーい、青春だね!」
「お幸せに!」
仁美は無理に口角を上げた。
「……ありがとう。」
声が震えないように、喉で押さえ込む。
震えているのは指先だけだった。
職員室横の小部屋。
試験の自己採点表を見ていた担任は、満足げに頷いた。
「うん、よくできてる。これなら合格ライン余裕だろ。」
「……ありがとうございます。」
仁美はやっと安堵の息を漏らした。