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【ハイキュー!!】矢印の先に、俺(私)はいない【R指定】

第9章 Cling to Me, Even If it Hurts


研磨は無表情のまま、黒尾と仁美の手元を見なかったふりをして、口を開く。




「別に……今までだって、2人で会う時くらいあったし。」

黒尾はすぐに笑った。

「だよな。たしかに。前から普通にあったもんな。」




その瞬間–––。

仁美と研磨の時間は『なんでもないもの』にされた。





優しさも、嫉妬も、心が揺れた瞬間も。

ぜんぶ、何ひとつなかったことにされた。





黒尾はゆっくり立ち上がり、繋いだ手を離さずに言う。

「じゃ、仁美送るわ。」




仁美は研磨を見て小さい声を出した。

「……またね、研磨。」

「じゃあね。」

研磨もいつも通り返す。




最後に、黒尾が振り返り、手を軽く振った。

「研磨、また明日な。」





ドアが閉まる。

黒尾の明るい声と足音が廊下に消えていく。




沈黙が落ちた部屋で、研磨は立ち尽くす。




今まで何度も見送った二人の背中。

家の前で手を振り合った日々。

ゲームしながら待っていた時間。




分かっていたけど、見送る2人の背中は今まで見送っていた背中とは違って見えた。

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