【ハイキュー!!】矢印の先に、俺(私)はいない【R指定】
第9章 Cling to Me, Even If it Hurts
研磨は二人を見て、静かに瞬きをした。
「ああ。……良かったね。」
そう言って、黒尾と仁美が並んで座るベッドの前まで来ると、研磨は肩から部活バッグを降ろし–––。
そのまま、そっと 仁美 の横に置いた。
置く瞬間、研磨の手の甲と仁美の指先が、触れそうで、触れない。
あと数ミリ。
ほんの気まぐれで触れてしまえる距離。
でも触れなかった。
研磨の視線はバッグに落ちている。
仁美もその瞬間だけ息を止めた。
黒尾は、それを見逃さない。
にやりと笑い、あえて明るく声を上げる。
「そんな顔して悔しいんだろ?もっと悔しがれよ。」
研磨は一瞬、動きを止めた。
そして思いっきり顔をしかめる。
「……うざい。」
黒尾が片眉を吊り上げた瞬間、研磨は続けた。
「しばらく……クロとは会いたくない。」
そう淡々と黒尾に言った。
一瞬 仁美の肩が震える。
その中で、研磨は視線を仁美へ向ける。
黒尾からは見えない角度で、ほんの一瞬だけ。