【ハイキュー!!】矢印の先に、俺(私)はいない【R指定】
第9章 Cling to Me, Even If it Hurts
甘い棘に全身を縛られる気持ちだった。
「……泣かないで。」
黒尾はそっと仁美の頬を拭った。
腕の中からそっと起こし、ベッドの縁にもたせる。
唇を近づけて、ふわり、と軽いキスを一度。
もう一度、そしてまた繰り返す。
涙の味が消えていくまで。
背中をなぞる手、髪を梳く手。
壊れないように扱うのに、もう離さないと言うような触れ方だった。
涙が止まる頃、黒尾は低く呟く。
「……これから、連絡……無視しないで……それと…。」
声が少しだけ震えた。
「研磨と……黙って2人で会わないで。」
仁美は胸が締めつけられるのを感じ、ゆっくりと頷いた。
「……わかった。」
その返事に黒尾はほっと笑い、額を重ねるようにそっと触れた。
「ありがとう。本当に……ありがとう。」
長く息を吐きながら、黒尾はもう一度、静かに仁美を抱き寄せる。
その腕は温かくて、苦しかった。
「なぁ、仁美。」
いつもの調子、軽い声、柔らかい笑顔。