【ハイキュー!!】矢印の先に、俺(私)はいない【R指定】
第9章 Cling to Me, Even If it Hurts
「……付き合う。クロと、……付き合う。」
震えた仁美の声が頭の上から聞こえたとき、黒尾は一瞬目を閉じた。
黒尾の腕がすぐに回り、強く抱きしめられた。
安堵の震えが、体越しに伝わる。
「––––うん。やっと言った。」
その声は涙に似ていた。
喜びと、狂気と、救いが全部混ざった声。
唇が触れる。
泣き声を飲み込むみたいな、優しいふりをしたキス。
涙を指で拭いながら、黒尾は囁く。
「仁美。俺のこと、好きだよね?」
泣き崩れながら、仁美は小さく、震えながら頷く。
その瞬間、黒尾は深く息を吐く。
救われた、というより–––
溺れた人間が水を飲んでしまったような顔だった。
「……それでいい。それだけあれば、もういい。」
黒尾は仁美の乱れた服にそっと手を伸ばす。
ひとつひとつボタンを留め、袖を整え、揺れる指先で首元を撫でる。
まるで、壊したものを自分で直すみたいに。
「……ほんとはさ…研磨に……おまえの体見せるなんてするかよ。」