【ハイキュー!!】矢印の先に、俺(私)はいない【R指定】
第8章 Unholy Devotion
仁美はまぶたを閉じるたび、倉庫での研磨の指先と黒尾の眼差しが交互に脳裏をかすめた。
それでも顔を上げず、問題の文字に視線を縫い付けるように読む。
同じ時間、体育館では、バレーボールの弾む音が乾いた床を震わせる。
「ナイッサー!」
部員の声が響く中、研磨はネット際でトス練習を受けていた。
指先が白く、冷たい。
視線はボールに向けたまま、時々、体育館の端に置いたスマホへわずかに揺れる。
(俺も集中しなきゃ…。)
胸が、少しだけ苦しい。
トスを上げ、またレシーブに回る。
「研磨、疲れてる?」
「……別に。」
息が上がるほど動いてないのに、胸の奥だけが重かった。
仁美の既読がつかない画面。
黒尾は、指先で何度もスマホをタップし直す。
通知センターを開いて、閉じて、また開く。
(なんで返ってこないんだよ。)
教室の空気は静かなのに、黒尾の心臓だけが落ち着かない音を立てていた。
机に置いたスマホを睨むように見つめ、ゆっくりと画面をスライドする。