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【ハイキュー!!】矢印の先に、俺(私)はいない【R指定】

第8章 Unholy Devotion


仁美 は息を詰めてページをめくった。



「……頑張りなよ。」

静かに落ちてきた研磨の声。

仁美は一瞬持っていたペンを止めた。



「……うん…。」

研磨の言葉に涙が出そうになる。

待っていたペンを握りしめてまた走らせる。




シャッターの隙間から吹く風が、二人の足元に冷気を漂わせる。




「…試験終わったらさぁ……。クロじゃなくて俺に会いにきて…。」




我慢していた涙がジワっと滲んだ。




「……うん……。」




遠くでボールの跳ねる音が、かすかに体育館から響いていた。




触れそうで触れない距離のまま、2人の呼吸だけがこの薄暗い空間に重なっていく。



––––––

––––––––

––––––––––





教室の窓に白く息がかかるたび、仁美は深く息を吸って、吐き出した。

机には赤線で埋まった参考書。付箋が翼みたいに散らばっている。

ペンを握る指は真っ直ぐ。




——集中しなきゃ。何かを考えてしまう前に。

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