【ハイキュー!!】矢印の先に、俺(私)はいない【R指定】
第8章 Unholy Devotion
仁美は息を呑む。
その瞬間、研磨が迷いなく身を寄せた。
その後に触れる研磨の唇。
もう躊躇いもなく舌が入ってくる。
少し戸惑いながらも、仁美もまたそれに応えた。
体育倉庫は寒くて、2人のリップ音は響いていた。
しばらく仁美の唇を堪能すると、研磨は唇を離した。
研磨の指先が、まだ 仁美 の頬に残る熱を追う。
けれど、すっと手を離した。
まるで、いま触れた事実を自分の中から消すように。
「……で、どうするの?」
倉庫に溶けていく低い声。
静かで、呼吸みたいに淡々としている。
「……勉強に、集中する。」
研磨はその横顔をじっと見た。
「そ。……じゃあ、そうしてね。」
仁美 は慌てて参考書を開く。
紙の擦れる音が、倉庫の静けさにやけに大きく響く。
研磨は跳び箱にもたれ、スマホを開く。
だけど視線は画面じゃない。
反射したガラス越しに、仁美 の横顔と揺れる睫毛を見ている。
押しつけない。
問い詰めもしない。