【ハイキュー!!】矢印の先に、俺(私)はいない【R指定】
第8章 Unholy Devotion
研磨はまばたきを一回だけして、小さく笑いもせずに言う。
「ふーん。余裕だね。」
「……え?」
何のことかわからず、仁美は研磨を見る。
軽く肩をすくめ、視線を窓の外へ向けた研磨は、淡々と告げる。
「入試、もうすぐでしょ。そんな顔してる余裕、あるんだ。」
「……だって、それどころじゃなくて。」
小さく呟くと、研磨は瞬きすらせず答える。
「それどころじゃない状況なんてさ……クロが勝手に作ってるだけだよ。」
柔らかく、淡々と。でも切れ味が鋭い。
「巻き込まれてるだけの仁美が、それで、未来こわしたら……バカみたい。」
仁美は唇を噛む。
何も言えなかった…図星だったから。
だけど、声にならない感情が胸で暴れる。
ふいに、研磨の指が伸びる。
そっと 仁美 の頬に触れた。
「……研磨?」
小さく震えた声。
驚いているのに、研磨の手を払わない。
「そんな余裕あるならさ。」
指先が頬から耳へ、髪を静かにかき上げる。
「……俺のことも、考えてよ。」