【ハイキュー!!】矢印の先に、俺(私)はいない【R指定】
第8章 Unholy Devotion
昼休みのチャイムが鳴り、仁美が静かに席を立つ。
参考書を抱え、目線を落としたまま教室を出ていく。
黒尾はその姿を目で追った。
(…図書室か?…それとも…。)
研磨のところだろうか––––。
黒尾は机に突っ伏すると、大きく息を吐いた。
入試前でなかったら、きっと叫んでいただろう。
昼休みのざらついた静けさの中、仁美は参考書を抱えて、体育倉庫の前に立った。
そっと扉を開けると、薄暗い空間に座る研磨の姿があった。
彼はスマホを伏せ、こちらを見る。
目は相変わらず眠たげなのに、どこか鋭さを含んでいる。
「……研磨。」
声をかけると、研磨は小さく顎を引き、横のスペースをぽん、と手で示す。
仁美は黙って隣に座る。
薄い埃の匂い。
ボールの跳ねるかすかな音が遠くに聞こえた。
重たい沈黙のあと、仁美が息を吸う。
「……クロから全部じゃないけど、聞いた。思ってた以上に、すごく……重かった。」
疲労を感じるため息まじりの声だった。