• テキストサイズ

【ハイキュー!!】矢印の先に、俺(私)はいない【R指定】

第8章 Unholy Devotion


その姿が、あまりに愛おしくて––––。

苦しかった。





(……そんな簡単に、俺を救うなよ。)

癒されるほど、離れられなくなる。




本当はもう手放さなくてはいけないと気付いているのに。



それなのに——

黒尾は願ってしまう。




仁美のぬくもりが、全部自分だけのものになればいい。





指先に残る温度を握りしめながら、黒尾はその衝動を喉の奥に押し込んだ。






––––––

––––––––

––––––––––





入試間近の三年生の校舎は、いつもの喧騒が嘘のように静かだった。




チャイムの音さえ、どこか重い。

特別授業の声、参考書の紙をめくる音、鉛筆の走る音が、張り詰めた空気に紛れていく。




昼休みでさえ、笑い声はほとんど無い。

黒尾はその隅で、推薦組とひっそり息を潜めていた。

騒げば、頑張っているやつらの集中を削ぐ。

空気を読むくらいは当然だ。





けれど——

視線だけは、隠せない。




机に黙々と参考書を解く仁美を今日も、黒尾は追ってしまう。


/ 312ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp