【ハイキュー!!】矢印の先に、俺(私)はいない【R指定】
第8章 Unholy Devotion
仁美のアイコン。
最後に送った “おつかれ” の短いメッセージ。
(読んでないフリ?それとも本当に見てない?)
わからない不確かさが、胸の奥をじくじくと苛む。
研磨の名前が、思考の端をかすめる。
(……まさか、また一緒?)
喉がひりつく。
脳裏に勝手に浮かぶ。
倉庫、廊下、放課後、静かな場所で二人が並ぶ姿。
声が出そうになるくらい、胸の奥がずきんと痛む。
スマホの端を、白くなるほど握りしめる。
(返事ひとつでいいのに。)
そんな小さいことすら手に入らない現実が、自分を滑稽にする気がして、黒尾は静かに笑った。
「……俺、こんな弱かったっけ?」
低く、掠れた声。
いつもはコートの真ん中で、誰より大きな声を出し、仲間を引っ張ってきたはずなのに。
いまは、一人の女子高生の“既読”に生殺与奪握られてるみたいだ。
情けない?
そんなの、とっくにどうでもいい。
ただ、胸の中の空洞が埋まらない。
(仁美じゃなきゃ、意味ない。)