【ハイキュー!!】矢印の先に、俺(私)はいない【R指定】
第2章 Shifting Distance
何も言っていないのに––––この部屋に入る直前の空気を読まれてしまったような気がした。
ほんの数秒前まで、確かに“何か”がここにあった。
仁美のスカートから、少しだけ伸びた足。
さっきの押し合いで、気づかないうちに布が乱れていた。
黒尾の視線がそこに止まった。
仁美はそれに気づかず、いつも通りの顔で黒尾を見ている。
その無防備さに、黒尾の目が少し歪んだ。
ソレに気が付いたのは、仁美でなく研磨だけだった。
研磨は横目で黒尾の視線をしっかり捉えながらも、スマホの画面から目を離さなかった。
指先だけが、いつもより少し強く画面をタップしている。
黒尾はゆっくりと部屋に入り、パーカーを脱いだ。
そして何も言わず、仁美の膝の上にそれをふわりと掛ける。
「……っ!」
仁美は一瞬息を呑んだ。
その瞬間、やっと自分がどんな格好をしていたのか理解した。
足元からぶわっと熱が上がって、顔まで一気に赤くなる。