【ハイキュー!!】矢印の先に、俺(私)はいない【R指定】
第7章 Obsession
一日、特に何も起きなかった。
仁美はいつも通りの笑顔で過ごし、誰にも特別な違和感を与えない。
それはあまりにも“普通”すぎて、逆に黒尾の目には焼き付いた。
教室のあちこちで交わされる雑談、窓から射し込む光–––。
その中で、黒尾は何度も仁美の姿を目で追っていた。
理由はわからない。
ただ、胸の奥で小さなざらつきが広がる。
笑顔も声も、すべてがいつも通りなのに、どこか違う。
帰り際、廊下に並んだロッカーの前で、黒尾は仁美の肩を軽く叩いた。
「今日、このあと……空いてる?」
仁美は、まっすぐ黒尾を見てニッコリ笑った。
その笑顔は、黒尾のよく知っている“優しい顔”のままだった。
「受験生だもん。図書室で勉強だよ。」
黒尾は当然のように「じゃ、俺も行く」と答える。
仁美は断らなかった。
ただ、笑顔のまま頷いただけだった。
放課後の図書室は、静まり返っていた。
この追い込みの時期、多くの生徒は塾に行っているため、校内の図書室を使う者は少ない。