【ハイキュー!!】矢印の先に、俺(私)はいない【R指定】
第7章 Obsession
静けさの中で、ページをめくる音と鉛筆の走る音だけが響く。
仁美は席に座り、机にノートを広げた。
黒尾もその少し離れた席に腰を下ろす。
すぐ近くなのに、なぜか彼との間に目に見えない距離があった。
黒尾はノートを開きながら、ちらりと仁美を横目で見る。
いつもと変わらない表情––––。
黒尾は視線をノートから外し、仁美の横顔を見つめた。
「……なあ。」
黒尾は目を細めながら、仁美の袖を指先でつついた。
ほんの少し、甘えるような声音で問いかける。
「何時に帰る?」
仁美はペンを止めて、黒尾を見上げた。
柔らかな笑顔を浮かべながら、はっきりと答える。
「下校時刻まで。……そのあと、研磨の部活終わるの待って一緒に帰ろう?」
いつも通りの、なんでもない会話。
だけど黒尾には、その“自然さ”がやけに不自然に感じられた。
まるで、完璧に用意された「逃げ場のない答え」のようだった。