【ハイキュー!!】矢印の先に、俺(私)はいない【R指定】
第2章 Shifting Distance
研磨の声はいつも通り淡々としているのに、指先だけがほんの少し強く仁美の手首にかかった。
スマホを取り返そうとした彼と、奪われまいとする仁美。
軽い押し合いみたいな距離で、互いの体温が近づく。
「やだ。」
「返してって。」
顔と顔の距離が、ふと近づいた。
息が少しだけ混ざる。
激しく揉み合って仁美のスカートの裾がめくれ、太ももが少し露わになった。
陽の光を反射した白い肌が、思いがけず視界の中に入ってくる。
研磨の目が、一瞬だけ見張られる。
まるで息を呑んだように、彼の指先が止まった。
ほんの一瞬–––––それだけだった。
すぐに彼はスマホを奪い返し、視線を逸らした。
その横顔は普段通りの無表情のようで、でもどこかぎこちなさが残っている。
「……バカ。研磨にしか相談出来ないのに……。」
小さく呟いた声が、研磨の耳にも届いたかどうか分からない。
静まり返った部屋に、スマホからゲームの音だけか聞こえた。