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❁✿✾ 依 依 恋 恋 ✾✿❁︎/イケメン戦国

第3章 依依恋恋 三話



もっともらしい理由を並べ立て、光秀がフォークで手にした洋菓子を口にする。柔らかくふわふわとした食感が伝わり、確かに凪が好みそうな菓子だと内心で納得した。一方、きょとんとしたままで男の問いを受けた彼女は、取り敢えず肯定しなければいけない雰囲気に半ば呑まれる形で頷いてみせる。

「そう、かもしれないです……?」

否と言えない日ノ本の人間の性質が存分に発揮された状態とはいえ、肯定は肯定だ。言質(げんち)は取ったとばかりに光秀が口角を薄く持ち上げると、何処か愉しげな色を眸に浮かべる。

「ならば今後はお前も、名字ではなく名で呼ぶといい」
「え!!!?わ、私もですか!!?」
「当然だろう、俺だけがお前を名で呼んだところで対等とは言えないからな」
「何かとてつもなくこじつけめいた話のような……!!!?」

(それについては俺も同意だ)

ぎょっと驚いた風に目を白黒させている凪が、焦燥を露わに眉尻を下げた。彼女の記憶云々はともかくとして、凪の意志をまったく無碍にする形で彼女を手に入れようとは思っていない。凪が待って欲しいと言うなら幾らでも待てる自信はある。────だが、かと言って光秀が手加減するかというと、それは別の話だ。

「ものは試しだ。呼んでごらん」
「え゛っ!!!?」

思わず素で反応してしまった、と言わんばかりの凪に対し、光秀が可笑しそうに口元を緩める。こちらの世で言う、ぱわはら的な意図で凪へ強いている訳ではまったくないが、もしかしたら彼女はそれに近い意味で受け取ったかもしれない。社の看板作家である光秀と、新人編集者ではそもそも立場が異なる。例え卑怯と謗(そし)られようと、いつまでも他人行儀な呼び方で甘んじている程、光秀は殊勝な男ではなかった。

「ほ、本当に名前で呼ぶんですか……?私みたいな新人が、何か恐れ多いというか……」
「そう気負う事もない。ただし、お前がどうしても嫌だと言うのなら無理強いはしないが」
「嫌だなんて、別にそんな事はないですけど、でも……!」

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