第3章 依依恋恋 三話
「これは……?」
「先日、お前と話した内容を更に煮詰めたものだ」
「拝見させて頂きますね」
明智先生の手書き生プロットだ!と凪が内心で高揚しつつ、紙面へ意識を向ける。原稿用紙にはかなり達筆な、けれども読みやすい筆致で文章が綴られていた。つい昨日、光秀から聞かされていた基盤の設定となる、二柱の男神(おがみ)と彼らから奪い合われる一柱の女神、そして漁夫の利を狙う一柱の男神の件はそのまま活かされているようであった。
「わあ……!舞台が神代(かみよ)から現代に変わってる。これなら若い層でも取り込む事が出来そうです!」
物語の主人公は、天照大御神(あまてらすおおみかみ)の神格を受け継いだ一人の女性だ。舞台となる現代には、神代(かみよ)時代から脈々と神の神格を受け継ぐ御子(みこ)が稀に生まれて来る。御子となった者は不可思議な力と、神格を受け継いだ神の記憶を受け継ぐ事となるが、主人公は力こそ受け継いだものの、神としての記憶を忘れ去ってしまっていた。
そこへ饒速日命(にぎはやひのみこと)と建御名方命(たけみなかたのみこと)の記憶と力を受け継ぐ御子が現れ、更には三人の仲をかつて引き裂いた瓊瓊杵尊(ににぎのみこと)の神格を受け継いだ者が現れる事で、四人は神代(かみよ)から続く因縁の四角関係へと陥る事となる────。
(き、気になり過ぎる……!和風ファンタジー好きには特に堪らない設定だ!というか明智先生、四角関係とか書くんだ、やっぱり凄く新鮮……!早く読みたい!!)
女性をターゲット層に、という指示通り、がっつりと恋愛に寄せた内容に凪の胸が踊る。勿論、話の内容としては恋愛パートだけでなく、光秀が得意とするミステリーパートも多く含まれている印象だ。主人公の神としての記憶を奪った者の存在、瓊瓊杵尊(ににぎのみこと)の神格を持つ者が主人公を欲する目的、饒速日命(にぎはやひのみこと)と建御名方命(たけみなかたのみこと)が仲違いをした真実など、様々な要素が盛り込まれている。