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❁✿✾ 依 依 恋 恋 ✾✿❁︎/イケメン戦国

第3章 依依恋恋 三話



無意識の内に小さく零し、凪が簪を見つめた。九輪の水色桔梗が象られた硝子細工のそれは、窓から射し込む明るい陽射しを受けてきらきらと輝いており、不可思議な魅力を放っている。簪というからには明らかに女性用のもので、それが執筆を行う書斎机の上にあるという事は、光秀にとって特別なものという事なのだろう。

(……誰かへの贈り物、とかなのかな?)

そこまで考えてまだ出会ったばかりな上、編集と作家という関係性でありながら、作家個人のプライバシーを害するのは良くないと我に返り、ソファーへ戻ろうと踵(きびす)を返しかけた。けれど、それより早く襖をすっと開いた光秀が書斎机前にいる凪を認め、くすと小さく笑う。

「何か気になるものでもあったか?」
「わあっ!!?か、勝手にすみません……!!」

びく、と悪戯を気取られた猫の如く顕著な反応を示し、凪が罰の悪そうな顔で向き直った。漆塗(うるしぬ)りの盆を片手に持っている男が軽く首を傾げ、特に気にした風もなく揶揄めいた様子で金色の双眸を眇める。

「なに、別に見られて困るようなものはない。部屋だけでなく、部屋主の事へも関心を持ってくれて構わないぞ」
「もう……!からかうのは止めてください、先生っ」

むっすりと眉間を寄せた凪へくつくつと低く喉を鳴らして笑った男が、後ろ手に襖を閉ざした。盆の上には湯気の立つ白いシンプルなティーカップと、皿へ移し替えたカップチーズケーキが乗っている。それを硝子天板のテーブルへ置いた後、光秀が何気なしに彼女の方を見た。

「それで、何を見ていたんだ。お前の興を惹くようなものは、あまりこの部屋にはないと思うが」
「そんな事ないですよ。先生の著書もそうですし、興味深い資料も沢山あります。あと、この簪が凄く綺麗だなあと思って」

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