第79章 翻弄される日々〜冨岡義勇【R18強強】
医師が去った後、義勇は眠るゆきの髪に触れた。
「…すまない…俺は自分がわからない…」
届かぬ謝罪…義勇は逃げるように部屋を後にし
鍛冶場に向かった。
ゆきの刀を取りに行くためだった。
その途中、義勇は予期せぬ人物と出会う。
「…冨岡じゃねェか。こんなところで何してやがる。」
不死川だった。任務の合間に刀の調整で寄っていたという彼は、義勇が一人であることにすぐさま不審な目を向けた。
「おい、ゆきはどうしたァ?湯あたりは良くなったのかァ?」
つい先日、温泉で倒れたゆきを助け出したのは不死川だった。
あの時、自分の宿で介抱しようとした彼を拒み、ふらつく足取りで義勇の元へ帰っていったゆきの必死な姿が、不死川の脳裏には焼き付いていた。
「…夜風に当たりすぎて、肺を患った。今は安静にさせている」
義勇の視線は泳ぎ、声は少し震えている。
その不自然な様子に、不死川は苛立ちを隠せず一歩踏み込んだ。
「…テメェ、何か隠してやがるなァ。最近、胡蝶とやけに親密だって噂だが。ゆきの事はもう諦めたのかよォ?」
その問いは、義勇が最も触れられたくない核心をつく問だった。
逃げ場を失った義勇の脳裏に、昨夜ゆきに冷めた声で言われた「欲望のはけ口」という言葉と、胡蝶への捨てきれなかった情が混ざり合い、溢れ出してしまった。
義勇は、小さな声で重い口を開いた…。
「…胡蝶と、良い仲になった」
不死川が驚き後ず去る…
「なのにゆきを前にしたら堪らなく愛おしく感じて、俺はあいつを…無理に抱いた。身体を壊していると分かっていながら、己の醜い感情を押し付けたんだ」
不死川の拳が震えるのを見ることさえできず、義勇はただ空を仰いだ。
「てめェ何言ってやがる?胡蝶と良い仲になりながら、ゆきを手放すのも勿体なくて、師範と言う立場を利用してあいつを…抱いたのかよォ!?」
「…あいつが、時透を好いているのか、お前を好いているのか…わからなくて…胡蝶に甘えてしまい…だけど俺はゆきに触れたくて昨夜…止まらなくなった。山賊の記憶も俺が消したかったから、抱いた…。」
義勇は、拳を握りながら少し震えていた。