第78章 離れゆく気持ち…
「ゆき、目を覚ませ! ゆき!」
義勇の悲痛な叫びに反応するように、ゆきの青白い瞼が微かに震え、ゆっくりと開かれた。
焦点の定まらない瞳が、必死な形相の義勇を捉える。
「…あ…ぎ、ゆう…さん」
「何故こんな所にいる!?」
義勇は迷わず自分の羽織を脱ぎ捨て、ガタガタと震えるゆきの身体を包み込み、強く抱きしめた。
少しでも自分の体温を分け与えようと、必死に肌を寄せた。
しかし、その瞬間
「…っ、やめて!」
ゆきの顔が苦痛に歪みます。鼻を突いたのは、義勇の隊服に深く染み付いたしのぶの残り香。ツンと鼻を刺すような薬草と、藤の花の香りが、昨夜の二人を想像させた。
「離して…気持ち悪い…」
ゆきのその言葉に義勇の胸が苦しくなる…
「ゆき…落ち着け。」
「大丈夫ですから。放っておいて…」
ゆきは、義勇の貸した羽織を地面に落とし、震える足で立ち上がった。
「待て、昨夜ここで過ごしたのか?」
「…行くところがなかったから…」
「何故、不死川の所へ行かなかった?」
ゆきは、涙をためた目で義勇を見つめ言い放った。
「逆に聞きます…。義勇さんは好きでもない相手と二人きりで夜を過ごせますか?」
「え…?」
「義勇さんは昨夜…しのぶさんと過ごしたんですよね?身体からしのぶさんの香りがします…。私は、別に不死川さんの事を好きとは、思っていないので部屋には行きませんでした。義勇さんは…しのぶさんが好きだから一夜を過ごしたんですよね…」
「そ、それは…」
「私から気持ちが離れていっているのには、気づいていましたが…昨日は、いつもみたいに息を切らして私を見つけてくれるかもしれない…って淡い期待をしていました。」
「ゆき…俺は…」
「やっぱり継子を、辞退します…もう傍にいれない…」
義勇の心臓が大きく鳴り響く…ゆきが…側から居なくなる?
嫌だ…
義勇は、思わずゆきを抱きしめていた。
「い、いやっ!触らないで!」
ゆきは、義勇の腕から逃れようと暴れる…
「勝手だと思うが離したくない!」
「いや!離して」
「嫌だ!離さない!」
「しのぶさんと愛し合った体で抱き締めないで!」