第78章 離れゆく気持ち…
義勇さんの真剣な目…これって…しのぶさんと過ごしたいって遠回しに言われているの?
それなら…
「悲しくないです。しのぶさんと過ごしたいんですよね?なら部屋を替わって下さいとしのぶさんに、言って来ます。」
ゆきは、慌ただしく自分の荷物をまとめ始めた…ただ手が震えている…。
義勇は、ゆっくりゆきに近づいていく…震える手に自身の手を重ねた…。
「震えている…もういい。今日は休もう」
義勇は、ゆきから荷物を取り上げ自身の荷物の隣に並べた。
「ただ…ひとつ聞く」
義勇は、真剣な顔でゆきを見詰めた。
「何ですか?」
「先程…不死川と温泉で何をしていた?」
「え…?…何も…湯あたりして気を失いかけていた私を脱衣所まで運んでくださっただけです。」
「たまたま、不死川も温泉に来ていたのか?」
「はい。後で、任務後に温泉に寄ってから宿に向かう途中と聞きました。」
疑ったような表情を、義勇は崩さなかった。
「…裸を見られたのでは?」
「…わかりません…脱衣所では、たまたま居合わせた女性の方に服を着せてもらったと不死川さんには言われました。」
何…さっきしのぶさんと口付けしてたくせに…私と不死川さんをこんなに疑って…
「わかった」
義勇の声は、先程までの熱を失ったように酷く冷たかった。
義勇はゆきから視線を逸らし、吐き捨てるように言葉を繋いだ。
「言い訳はもう良い…不死川の宿へ行け。…あいつと温泉での続きをしてこればいい…」
何でそうなるの…私の話を信じないの?やっぱり、義勇さんはしのぶさんと過ごしたいんだ…。私のことなんて、もうどうでもいいんだ…
「わかりました。お邪魔でしたね」
震える声でそれだけ返すと、ゆきは荷物をひったくるように掴み、逃げるように部屋を飛び出した。
しかし、足が向いたのは不死川の宿ではなかった。涙で霞む視界のまま、ゆきは町の喧騒を離れ、里を一望できる静かな高台へと駆け上がった。
冷たい夜風が頬を打つ。一人きりになった高台で、ゆきは膝を抱え、遠くに見える宿の灯りを見つめながら、止まらない涙を拭った。
部屋に残された義勇は、何で不死川の所へ行けと言ってしまったのか自分でもわからなくなっていた。
あいつが曖昧だからだ…