第78章 離れゆく気持ち…
次の日朝早くから義勇さんは、出かけていってしまった。
もう、すっかり私に関心はないみたいで声すら掛けてくれない。
前は必要以上に私に構っていてそれを少し重たくも感じていた…。
だけど、そんな義勇さんが存在していたのが嘘みたいに感じる。
義勇も、また葛藤していた。しのぶに言われた想いが、胸を締め付ける…。俺は、ゆきが好きだ…。今は、ゆきは時透の婚約者でもなくなった。だから俺は遠慮はしないと決めた…。
だが、その裏で胡蝶を苦しめていた…。そこまでとは、知らなかった…
前みたいに、ゆきに素直になれなくなってしまった。
触れれなくなった、目を見れなくなった…。
胡蝶の顔が浮かび胸が締め付けられるから…。
日も暮れ小雨が降り始めた頃義勇は、屋敷へと戻ってきた。
義勇は、しのぶに誘われて蝶屋敷へと出向いていた。しのぶの心内を知ってから誘いを断れなくなっていた。
ふと、中庭に目を向けるとゆきが一生懸命竹刀を振っていた。
雨に濡れながら…以前怪我をした手の甲の傷から血がにじんでいる…
俺の気配に気付きゆきは、振り返った。
「お、おかえりなさい!すぐ、食事の用意しますね。」
ゆきは、血の滲んだ手の甲を掌で隠しながら急いで台所の方へ走って行った。
食事の用意ができ、ゆきが箸を持とうとしたその時義勇に黙って手を掴まれいきなりの事で驚き固まってしまった。
「不死川に、縫い合わせて貰った傷が少し開いている。手当てするから来い」
「いいえ、これくらい……」と反射的に拒もうとしたが、義勇さんは何も言わず、ただ強い力で私の手首を引いた。
奥の間へ連れて行かれ、義勇さんは手慣れた動作で救急箱を取り出す。私の震える手をそっと包み込み、血を拭うその指先は驚くほど優しい。けれど、その視線は決して私の瞳と合わされることはなかった。
「義勇さん…私と一緒に居ることがもし苦痛なら…継子を辞退します…。」
その言葉を聞き義勇は、ゆきの顔を見た…。
「最近私を見るのも苦痛そうだし、もともと無一郎くんと婚約を解消した時に義勇さんの継子も辞退するはずだったし…止めてくれた義勇さんが、私を嫌いなら継子でいる意味はないですし…」
義勇の顔色がみるみる変わる…