第78章 離れゆく気持ち…
しのぶが、あの日義勇と無一郎の前で、美月がどれほど無一郎を思っているか、自分が義勇の事をどう思っていたのか話して以来、義勇のゆきに対する態度があからさまに変わった…。
稽古中に質問しても、義勇は相変わらず目を合わせてくれない。
「…そこは、もっと踏み込みを速くしろ」
短く、突き放すような言葉だけを投げかけ、視線は手元の刀や、あるいは遠くの木々に固定されたままだった。
かつての義勇なら、言葉は少なくとも、確かな熱量と指導者としての厳格さを感じられた。
だけど、今は…あからさまに避けている…
「義勇さん」
重ねて問いかけようとした瞬間、義勇はわずかに肩を震わせ、逃げるように背を向けた。
「…休憩だ」
ゆきは、ため息をついて屋敷の中へ戻って行く義勇の後ろ姿を眺めていた。
義勇さん…絶対に目を合わせてくれない…
すっかり日も暮れ夕食の刻になった。義勇と共に夕食を取るが、二人には距離が出来ていた…。
「あの…さっきの稽古の時のことですけど」
「…」
「踏み込みの速さ、明日もう一度見ていただけますか? 私、どうしても重心が後ろに残ってしまって…」
懸命に、義勇が「師範」として反応せざるを得ない話題を選んだ。
だが、義勇はゆっくりと茶碗を置くと、やはり視線を泳がせ、ついには隣に置かれた刀の鞘を見つめたまま呟いた。
「…明日は、出掛けるから稽古はなしだ。」
「えっ、でも…」
「俺は、外せない用がある。…ご馳走様」
義勇は、それだけ言い残し部屋を後にした。
そんなに…避けなくても…そんなに、私の事いやになったのかな?
以前の義勇さんには、もう会えないの?
嫌われる時ってこんなにも急なんだね…。積極的な義勇さんに戸惑ったりしていたけど、もうそんな心配をする事もなさそうだな…。
継子としても、もういらないのかな?私に、稽古つけたくないのかな?
あれ…私…泣いてる…
目から涙が溢れていた。
「…もう、私のことは見てくれないんだ」
これほど冷たく突き放されるなら、いっそ最初から優しくしないでほしかった。
義勇の背中に感じた拒絶が、痛いくらい深く胸を刺していた。