第77章 私は誰が好き?〜時透無一郎 冨岡義勇 不死川実弥 【R強】
しのぶの放った言葉は、真っ直ぐに義勇と無一郎の胸を貫いた。
「…っ」
無一郎は、目の前で震える美月から目を逸らすことができなかった。
彼女に贈った香油、優しく接した時間。それらすべてが、心のどこかでゆきの面影を追うための「代償」だったから…。
無一郎の脳裏に、美月の健気な笑顔が走馬灯のように巡る。
自分がゆきの名前を呼ぶたび、彼女がどんな思いでその言葉を飲み込み、微笑みを返していたのか…。
彼女の純粋な好意を、自分の孤独を埋めるための道具にしていた。
「ごめん…美月…僕は…」
美月は、我慢できずに無一郎に抱きつき泣いた…。
一方、義勇もまた、深い沈黙の中に突き落とされていた。
しのぶの瞳が、寂しそうに義勇をじっと見つめている。
俺は…何をしていたんだ
口下手で周囲から浮いていた自分に、辛抱強く声をかけ続けてくれたのは誰だったか。苛立ちを見せながらも、隣を歩き、孤独の淵から引き戻そうとしてくれたのは、間違いなく目の前のしのぶだった。
ゆきという存在に心を奪われ、その輝きに目が眩んでいたけれど、かつての自分にとっての救いは、確かにしのぶの言葉の中にあったはず。
胡蝶は……ずっと俺を、一途に…
そう自覚した瞬間、義勇の心に激しい葛藤が渦巻く。
自分を想い続けてくれた人の心を切り裂いてまで、誰の心も掴ませてくれないゆきを追いかけることに、一体何の意味があるのか。
色々あったが…ゆきは元は時透の婚約者。俺の手は届かない相手…必死に求めてきたけどいつも曖昧なお前…
だが、胡蝶は…いつも俺に真っ直ぐだった
義勇もしのぶの献身に、無一郎も美月の涙に、目の前の愛を無下にできない重みを感じ始めていた。
しかし、心に深く刻まれたゆきの面影は、容易には消え去らない。しのぶの瞳に救いを見出し、美月の温もりに罪悪感を抱きながらも、目の前のゆきが愛おしい…。
だが愛を昔から注いでくれていたしのぶの想いも胸に響いている…
差し出された愛に応えようとする理性と、なおもゆきを求めてしまう本能の間で、二人の心は激しく揺れ動いていた。
そんな、心が揺らぎ始めた二人にゆきは、気づいてしまった…。