第77章 私は誰が好き?〜時透無一郎 冨岡義勇 不死川実弥 【R強】
「そうなんです…!まさか不死川様が見つけてくださるなんて思わなくて…私、自分の不手際が情けなくて…っ」
「…嘘だ。」
義勇の低く、地を這うような声が響いた。
彼はしのぶの言葉に耳を貸すどころか、その瞳には軽蔑の色さえ浮かんでいた。
「不死川が現場に駆けつけた時、扉には外から鍵が掛けられていた。偶然鍵が掛かるような構造ではない…それに…胡蝶…お前は昨夜ゆきが閉じ込められていた時間ずっと俺の隣に居ただろう?いつ美月と会話したんだ?」
その場の空気が凍りついた瞬間、それまで黙って聞いていた無一郎が、ゆっくりと美月の前に立った。
無一郎の表情からは、先ほどまでゆきに向けていた甘い気配が完全に消え去っていた。
「…美月、胡蝶さんの後ろに隠れないで、僕の目を見て言ってよ。君は、わざとやったの?」
「む、無一郎様…!信じてください、私はただ…」
しのぶが、大きな溜め息をついた。
しのぶは真剣な眼差しを無一郎へ向けると言い放った。
「なぜ彼女の気持ちを分かってあげないのですか? 美月さんは誰よりも、一番に貴方を慕っているというのに。…時透くん、貴方は彼女をゆきさんの身代わりのように扱ってきましたよね」
その言葉に、無一郎の肩が微かに揺れる。
「同じ香りの香油まで贈り、用が済めば『継子だから』と都合よく線を引く…。あまりに身勝手だとは思いませんか?」
突きつけられた事実に、無一郎の脳裏に美月と過ごした時間が蘇える。
ふと視線を落とすと、そこには今にも泣き出しそうな、それでいて全てを諦めたような切ない表情を浮かべる美月がいた。
その顔を見た瞬間、無一郎の胸の奥が鋭く疼いた。
まるで、自分でも気づかないふりをしていた「何か」を無理やり引きずり出されたような、鈍い痛みが彼の心を支配していく…。
「だからってゆきを閉じ込めて怖い思いさせて言い訳がない!」
「ええ、彼女の行為を肯定はしません。ですが、そうまでして貴方の目を惹きたかった彼女の絶望を、誰が責められるのです?」
しのぶは冷静な声で告げ、次に義勇をまっすぐに見据えた。
「富岡さんも同じですよ。大切な人を守りたいなら、その影で誰が心を引き裂かれているか、少しは想像したらどうです?私の変らぬ一途な想い知っているでしょう?」
