第77章 私は誰が好き?〜時透無一郎 冨岡義勇 不死川実弥 【R強】
「…ぎゆう。ねえ、ぎゆう…」
熱にうなされたような、甘い呼び捨て。
普段の彼女からは想像もつかないほど大胆に、ゆきは義勇の首筋に柔らかな腕を回す。
「…美月さんの方が、強いから好き…?」
「なんだと?」
「美月さんのこと…いっつも褒めるから…。私にはすぐ怒る。継子なのに…弱い私は、嫌い?」
震える声。胸元のひとつだけ留まったボタンが、彼女が動くたびに弾けそうに引き連れ、俺は胸が高鳴る。
ゆきは、義勇の隊服をぎゅっと握りしめた。
「ぎゆう…嫌い? わたしのこと…」
潤んだ瞳で上目遣いに見つめられ、義勇の自制心は音を立てて崩れそうになる。
嫌いな理由無いだろ…
むしろ、こんな姿を見せられて、正気でいられるはずがない…。
「…嫌いなわけがないだろう」
義勇は、堪らずその細い体を抱き寄せた。
ひとつだけ残ったボタンに指が触れそうになり、慌てて手を止める。
これ以上触れれば、自分も「何もしない」という約束を守れる自信がなかった。
「お前は…誰よりも、目が離せないんだ」
消え入りそうな声で囁くと、ゆきは満足したように彼の胸に顔を寄せ、そのまま深い眠りへと落ちていった。
ゆきの本心を知れたような気がする…。時透と共にお前が怪我をしたあの出来事から少しお前に、距離を取られているような気もした…。胡蝶に、薬を嗅がされ意識がなくなりお前に、誤解されるような状況にもなった…。だが、先程の酔ったお前を見ていると…時透よりももしかして俺に、気持ちが向いているのではと錯覚してしまう…。
俺の腕の中で安心しきっている顔を見ると、そう感じずにはいられない…。
昨夜のその光景を思い出し、廊下を歩く義勇の顔は、朝日の眩しさとは別の理由で赤く染まっていた。