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鬼滅~甘い恋の話~時透無一郎、冨岡義勇★R18

第88章 淋しい夜〜冨岡義勇


義勇が去った後ゆきは一人、彼に寝かされた布団の中で丸まり、ぽつりと呟いた。

「ついて…行きたかったな…」

けれど、どうしてもあの条件を呑むことはできなかった。

義勇の熱い視線に、唇に、心が凍りついたわけではない。むしろ、彼が向ける情熱はあまりに真剣で、眩しすぎた。

だけど義勇にはしのぶという恋人がいる。

「…口付けは、できないよ…」

やりきれない想いを誤魔化すように、ゆきは深く布団を被った。

その瞬間、義勇の香りふわっとした。

ここは彼の部屋で、これは彼が毎日使っている寝具。

包み込まれるような感覚に、なぜか落ち着いていく。

昨夜の寝不足と、無一郎への募る不安。

「無一郎くん…」

ゆきは義勇の残香に守られるようにして、いつの間にか眠りへと落ちていった。

一方、義勇は風を切って、無一郎が向かったはずの街へと急いでいた。

時透の鴉は何をしている? 異常があれば、すぐさま本部に伝令が飛ぶはずだ。それが一切ないのは…おかしい

胸をざわつかせるのは、行方不明の時透の事だけではない。

先ほど、ゆきに拒まれた事が…胸を締め付けてどうしようもない虚しさで溢れていた…

しのぶという存在がありながら、ゆきの時透への純粋な想いに、どうしようもなく嫉妬し、ゆきを試すような真似をしてしまった…そんな自分が恥ずかしい…。

俺は一体、何を焦っている…

考え事をしている間にも街に義勇は、到着していた。

だが、義勇が辿り着いた街に、無一郎の姿はなかった…。

その頃、無一郎と美月は、当初の目的地から大きく外れた隣町にいた。

「森で失くした簪を探してほしい」

という美月の涙混じりの願いを聞き入れ、捜索を手伝ううちに、いつの間にかここまで誘導されていたのだ…。

「時透様、本当にすみません。私の不注意で、こんな遠くまで…」

申し訳なさそうに俯く美月を、無一郎はぼんやりと、け見つめる。

「いいよ。見つかるまで付き合うから」

「ありがとうございます…」

すべては美月の計算通りだった。

帰ってこない、自分達を心配して誰か来るだろうと予想していたから…

「そう言えば銀子に、ちゃんと屋敷の隠に伝えるように言ってくれた?美月の母さんの形見の簪が見つかるまで帰らないって」

「はい!勿論です」


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