第77章 私は誰が好き?〜時透無一郎 冨岡義勇 不死川実弥 【R強】
「…やだ、離して…」
無一郎の腕の中で、ゆきがもどかしげに身悶えた。酒の熱で思考は混濁し、視界も歪んでいる。しかし、部屋に満ちた凍てつくような殺気と、聞き慣れた低い義勇の声が、彼女の本能を呼び覚ましていた。
「動かないでって言ってるでしょ。隊服、はだけたままだよ。そんな姿、人に見せたいの?」
無一郎の指先が、はだけた襟元を整えようと鎖骨をなぞる。
そして、ゆきを自分だけに繋ぎ止めようと、逃げ道を塞ぐように覆いかぶさった。
だが、ゆきはその言葉すら耳に届かない様子で、必死に無一郎の胸を押し返した。
「…ぎ、ゆう…」
震える声でその名を呼ぶ。
「こら、ゆき大人しくここで、寝てよ。」
「行かなきゃ…私…」
足元もおぼつかないまま、ゆきは無一郎の拘束をすり抜けようと這い出す。
乱れた隊服が肩から滑り落ち、白い肌が夜の空気に晒される。
それすら構わず、ゆきはただ一人、自分を見つめる義勇の方へと手を伸ばした。
「ゆき、そっちに行っちゃダメだ」
無一郎の声に、これまでにない険しさが混じる。彼はゆきの腰を強く引き寄せ、再び自分の元へと引き戻そうとした。
「離せと言ったはずだ、時透」
義勇が刀の鞘がカチリと音を立て、抜き放たれる寸前の緊張感が部屋を支配した。
「落ち着いてください! 水柱様、話を聞いて!」
美月が悲鳴のような声を上げ、二人の間に割って入ろうとする。無一郎に怪我をしてほしくない…。
だが、義勇の視線は美月を透過し、ただ一点、無一郎の腕の中で今にも泣き出しそうな瞳をしている、ゆきだけを捉えていた。
「…ゆきは、俺を呼んでいる離せ」
低く、断定するような響き。
ゆきは無一郎の手を振り払い、千鳥足のまま、吸い寄せられるように義勇へと歩み寄る。
「ぎゆ…けんかはやめて…」
その体が崩れ落ちるよりも早く、義勇の強い腕が彼女を引き寄せた。
無一郎の体温を上書きするように、義勇は自分の羽織でゆきの剥き出しの肩を荒々しく包み込む。
その腕は、怒りで僅かに震えていた。
無一郎は、腕の中からすり抜けていったゆきを切なげに見つめた