第77章 私は誰が好き?〜時透無一郎 冨岡義勇 不死川実弥 【R強】
義勇の胸中は、ざわめく不協和音で満たされていた。
前を走る美月の背中は必死そのものだが、彼女の叫んだ「無一郎様が嫌がっている」という言葉に、拭いきれない違和感が付きまとう。
無一郎の底知れない身体能力は、義勇も認めるところだ。もし本気で拒絶しているのなら、ゆきの手をすり抜け、組み伏せることなど容易いはず。
なぜ、時透が抗わない……?
考えたくもない仮説が頭をよぎる。時透が拒んでいないのだとしたら。
それどころか、自ら望んでゆきを求めているのだとしたら…。
心臓が速まった…ゆきを奪われるという焦りと、案内する美月への疑念が混ざり合い、視界が歪む。
「…急げ」
低く短い一言を発し、義勇は廊下を蹴った。
前を走る美月の唇が「計画通り」と言わんばかりに、醜く吊り上がっていることにも気づかずに。
ーその頃ー
薄暗い部屋には、高まった二人の体温が混じり合い、甘く重苦しい空気が満ちていた。
無一郎の指先が隊服を開き、露わになったゆきの肌に触れる。
久しぶりに触れるゆきの体温は、記憶よりもずっと柔らかく、吸い付くような弾力を持って無一郎の理性を削っていく。
「ゆき、怖くない?」
かつてゆきを襲った山賊の記憶を呼び覚まさぬよう、慎重に、優しく囁く。
しかし、無一郎の舌がその柔らかな膨らみの頂を丹念に転がし吸い付いたその時、ゆきの身体が大きく反応した。
「あ…っ、ぎ、ぎゆう…っ」
その唇から溢れたのは、無一郎がもっとも聞きたくなかった人の名だった。
一瞬、部屋の空気が凍り付く。無一郎の動きが止まり、動揺している自分に気付いた。
「また…何言ってるの?僕の名前呼んでよ…」
またゆきの胸を優しく愛撫し始めると…気持ちよさそうな、反応を返してくれる。
美月と義勇は部屋の前に着いた…
扉を乱暴に開け放とうとした義勇の指先が、内側から漏れ出る艶めかしい吐息に凍りつく。
「ぎゆう…っ、ぁ…」
愛しい女の呼び声。絶望的な状況下で己の名を呼ばれた喜びと、激しい怒りが義勇を支配する。目の前では、無一郎の手が彼女の肌をゆっくり撫でていた。
「何をしている、時透」
静まり返った部屋に、義勇の低い声が、響き渡った。