第77章 私は誰が好き?〜時透無一郎 冨岡義勇 不死川実弥 【R強】
無一郎は、ゆきをそっと布団に横たえた。
美月がかいがいしく裾を整え、濡れた手拭いを用意しているが、その過剰なまでの世話が無一郎にはわずらわしかった。
食糧庫に、ゆきが閉じ込められた事もその張本人が美月だった事も、無一郎はまだ知らない。
ただ、この場から一向に立ち去ろうとしない彼女の存在が、猛烈に邪魔だった。
「もういいよ。あとは僕がやるから、君は下がりなよ」
無一郎の通告にも、美月は食い下がる。
「ですが、無一郎様。お疲れでしょうし、女性の介抱は私の方が…」
「しつこいな。僕の言葉が聞こえないの?」
空気が凍りついたその時、布団の中でゆきがゆっくりと身を起こした。
酒の熱のせいか、その瞳はトロンと潤み、甘えるように無一郎を見つめている。 「どうしたの? どこか痛む?」
無一郎がこれ以上ないほど優しい声で問いかけ、その細い肩を抱き寄せた。
しかし、意識の朦朧としたゆきの口からこぼれたのは、彼が一番聞きたくない名前だった。
「…ぎゆう、は…? ぎゆう、どこ…?」
その一言が、無一郎の理性をぶち切った。
僕と一緒にいるのに、なぜ他の男の名を呼ぶの?なぜ、冨岡さんを求めるの?
傍らで美月が、探るような声で追い打ちをかける。
「無一郎様…やはり、水柱様と介抱を代わられた方がよろしいのでは? ゆきさんもあのように仰っていますし…」
「黙っててよ」
無一郎の低い声が響く。
彼は美月がそこにいることなど、もはやどうでもよくなった。
ただ、自分以外の名前を呼ぶその唇を、物理的に塞いでしまいたかった。
無一郎はゆきの後頭部に手を回すと、逃げ道を奪うように強引に顔を近づけた。
「ん…っ!?」
驚きに目を見開くゆきの唇を、無一郎が深く、容赦なく塞ぐ。
美月の目の前であることも、無視して。
無一郎はゆきの熱い吐息を飲み込み、舌を絡ませ、執拗に、濃厚に、唇を味わった。
「義勇って…やめてよね…その呼び方…君の師範でしょ?」
ゆきを、組み敷き無一郎は、ゆっくりと髪を撫で、愛おしくゆきを見つめていた…。
その背後で、美月は胸が締め付けられるほど切なくなり、震える体を両手で抱きしめ立ち尽くすことしかできなかった…