第77章 私は誰が好き?〜時透無一郎 冨岡義勇 不死川実弥 【R強】
義勇は、眠るゆきをそっと横抱きにした。
その腕の中の熱に、先ほどの「ぎゆう」という甘い呼び声が脳裏を離れない…。
「待ってよ、冨岡さん」
部屋を出ようとしたその時、廊下の向こうから無一郎が美月と戻ってきた。
無一郎は腕の中のゆきを見た、その火照った顔と酒の匂いに、すぐに状況を察した。
「そんなに酔ってるなら、今日はうちに泊まればいいじゃない。このまま連れて帰るなんて無理だよ」
「断る。俺の屋敷へ連れ帰る」
義勇が頑なに拒むが、無一郎は淡々とした口調のまま、逃げ道を塞ぐように言葉を継いだ。
「もう夜も深いし、もし途中で鬼に遭遇したら?冨岡さんは戦えるだろうけど、まともに動けないゆきを危険にさらすつもり?それとも、その状態で戦いながらゆきを守り切れる自信があるの?」
正論だった。
さらに横からしのぶが「時透くんの言う通りです。酔った人間を夜道に連れ出すのは、感心しませんね」と追い打ちをかける。
義勇は、渋々その場に留まることを承諾した。
だが、無一郎の采配はそれだけでは終わらなかった…
「はい、じゃあ部屋は別々ね。ゆきは僕が連れていくから」
「……何?」
義勇が制止する間もなく、無一郎はひょいとゆきを自分の腕へと引き取った。
そのまま、有無を言わさぬ足取りで廊下の奥へと消えていく。
残された義勇は、空になった両手の感覚を確かめるように拳を握った。
ゆきに、「怖かった」と言わせてしまった後悔が混ざり合い、表情が一段と険しくなる。
傍らにいた不死川も、複雑な面持ちで義勇の背中を睨みつけていた。
ゆきが義勇にだけ見せた、あの無防備な甘え方…面白くねェ。何が「ぎゆう」だァ
重苦しい沈黙を破ったのは、しのぶだった。
「さて、お開きにはまだ早いですよ。食事の続きをしましょうか」
しのぶの提案に、不死川が応じる。
「ああ…やってらんねェ。付き合ってやるよォ」
こうして、残った者たちでまた食事が再開された。ただ、義勇は、早くゆきの元へ行く機会を伺っていた…。
時透と二人きりにしたくない…。