第15章 誘われた夜

「本当にいいのか？」
「え？…っと」
「ブリードは、本当にいろいろと面倒くさい男だ。わがままで、独占欲の塊、自由奔放で、自分の信じた道は絶対に曲げない。負ける事なんか考えちゃいないし、だめだと言っても時には俺らの言う事ですら一切聞かねぇ。」
「言い過ぎじゃねぇか？」
「ｸｽｸｽ…」
「そんな奴だ。言っちまえばフィルのがよっぽど素直だ。」
「……グレイ…」
「本当の事だろうが、そんな奴だ。」

それを聞いていた雅は呆けてしまっていた。

「…グレイ」

そうフィルに声をかけられてもグレイは止めることをしなかった。加賀は諦めたかの様に口を出さずにいた。

「…おい、お嬢ちゃん？」
「…あ、すみません、なんか…ありがとうございます…」

予想にしてもいなかった返事がグレイに向かう。それを聞いてフィルも驚きを隠せなかった。

「…ありがとうって…」
「あ、ありがとうもおかしいですよね…ただ、知らない事ばっかで…負けず嫌いで、曲げないところとかは知ってましたけど…この短時間ですごい情報量で…もっと聞きたくなってて…」
「ﾌﾟ…ﾌﾌ…ﾊﾊﾊ！」
「え、あ……えっと…」

不意にフィルが笑い出した。そのタイミングでグレイもまた一つため息を吐く。

「…俺らの完敗ってか？」
「え？」
「よかったな、ブリード」
「…ｯ」
「ぇっと…私…」
「これからもブリードの事、頼んだぞ？雅」
「…ｯ…」
「だってよ」
「だってって…言われても…」

そうこうしていると食事が運ばれてくる。