第15章 誘われた夜
「フィルはさ、もともとドライバーだったんだよ」
「…え?」
「その話はもういいでしょ、加賀さん」
「だってめっちゃ知りたがってるぜ?」
「はい…っ!!」
「そうですか?いい物でもないですが…」
そうしてフィルは話し出した。
「……ーーーって事はもともとチームメイトだったって事ですか?」
「あぁ。まぁな」
「…すごい…加賀さんと同じチームメイトが今こうして違ったスタイルで同じ夢に向かってるって…」
「…だろ?」
「でも僕は加賀さんに声かけてもらわなければ今ここに居ませんでしたから」
「そうなんですね」
嬉しそうに笑う雅の顔を盗み見る様に時々加賀はちらりとみる。それをバックミラー越しにフィルも見ては嬉しそうに笑っていた。
「…どうかしたか?」
「いや、…クスクス…」
『そういえば…』とグレイも話を始める。雅にとっては知らないことがたくさんあった。それでも嬉しさがどうしても勝ってくる。
食事の場所に着けば、個室に通された。
「…個室…」
「ま、一応、な?」
「いいじゃねぇか、な?」
ニカっと笑うグレイに連れられながらも雅も一緒に席に着く。何がいいかと選びながら、注文を決めていく。待っている間に、とグレイは雅をジっと見ながら話しかけた。
「…えーっとよ、いくつか聞きたいんだけど…いいか?」
「あ、はい…」
ピン…と背筋が伸びる雅を見てグレイは、クハ…っと笑った。
「そんな硬くならなくても大丈夫だ、」
「はい…」
「ブリードの事、どれだけ知ってるかとか、そんなんじゃねぇんだ」
「…え?」
不意にグレイから言われた言葉に雅は首をかしげることになった。