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Winner【サイバーフォーミュラ・加賀】

第15章 誘われた夜


「じゃぁ、17時にロビーで」
「ん…」

部屋の入り口ドアの近くまで来たものの雅は加賀から離れることができなかった。

「…どうしたよ」
「なんでもない」

そう答えながらもきゅっと巻き付いてしまった雅。

「…加賀さん…」
「…クス…大丈夫になる魔法、かけてやろうか」
「え?」
「……どうする?」
「…ほしい…」

そう返事をする雅の首にそっと唇を寄せる。

「…ッ?!」
「痕にはしてねぇから心配すんな。」
「…だけど…ッ…」
「それから、」

そういうと耳元に唇を寄せてそっと囁くように加賀は話し出す。

「城太郎」
「…え?」
「俺の名前。」
「……ッ」
「今のまま名字だろうと、名前だろうと…どっちで呼んでも構わねぇよ。」

そうしてパソコンを持たせて加賀は扉から出ようとする雅を見送ろうとした。

「…じゃぁ…また夜にね?」
「あぁ」
「…ありがと…」
「ん」

そうして雅が部屋を出てゆっくりと扉も閉まる。カチャッ…と小さな音がした後に扉の前で座り込んだ加賀。

「…だせ…ほんと…」

そう呟きながらも加賀の頬はしっかりとゆるんでいた。そっと自身の唇に触れればさっきの温もりがまだ残っている。

「…名前…呼んでほしいってのも俺のわがままだな…」

サイバーにいる間は致し方ない場合以外は本名を出すことはないと思っていた…でも…加賀はいつの間にか雅に呼んでほしくなっていたのだった。

「…」

ゆっくりと立ち上がれば今日子に電話をかける。

「もしもし?今日子さん?」

そうして彩に必要以上に近づかない様にと釘さしを依頼したのだった。
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