第38章 王者の来訪
「つかよ…城はいいよ。恋人だって選び放題…そうそう前から声かける奴じゃなかったけどよ…それでもきっと声かけたらついて来る子たくさんいたはずだろ…」
「…んー、そうかもしれない…」
「だろ?でも、俺はさ?なんつぅか、しがないメカニックだろ…」
「うん、だからモテないんだよ」
「解ってんだよ!」
「あ、ごめん、違う…」
「今更いい」
「そうじゃなくて…メカニックだからモテないんじゃないって事」
「ぁ?」
「メカニックだからモテないんじゃなくて、メカニックだからモテないって思ってる事が持てない要素なんじゃないかな?って…」
「…ッッ」
「こりゃリックが一本取られたな」
がははっと笑うグレイ。そんな中でフィルはゆっくりとリックの隣に位置取った。
「…あのさ、リック?」
「何?」
「俺さ、もともとドライバーなんだよ」
「は?!」
「そう、あれ、話してなかったっけ…」
「聞いてねぇ…」
「そか、ごめん。でもそんなにモテないから大丈夫」
「……クスクス…フィル?」
そう話すフィルに雅は声をかける。
「え、どうかした?」
「それ、きっとフォローになってない…」
「え、本当?」
しかしそんなやり取りを聞いていたリックはいつの間にかくすくすと笑っていた。
「…あー、もうわけわかんねぇ奴ら」
「…え、私?」
「雅もだけどよ?」
そう笑っている和やかな空気。はぁっと解りやすいほどの大きなため息を吐けばリックはまっすぐに加賀を見つめた。
「…城が、あいつが選んだ女だけはあるって事か…」
「え?」
「いや、なんでもないさ」
そう話しながらもニコッと笑っていた。