第37章 決勝の行方
「…ま、いけなくもねぇな」
「城?」
「ほら、マシンにもドライバーにも負担が出てくる頃だろ。残り四周。で、ハヤトは置いといて、新条にはミキちゃんが居るだろうからマシンの不備はないだろうな。で、メンタルも強ぇ。あとはアンリがどれだけ食いつけるかってところだけど。」
「…ん、なんかあるはずなんだけど…」
そんな時だ。
「雅?悪いな、」
そう言って加賀は雅のヘッドフォンを取り上げる。
「…よぉ、アンリ」
『何だよ』
「最初で最後に1つだけ。よく聞け」
『それどころじゃないっての!』
「まぁそういうな。…好きに走れ。何のために走るのかとか、そんなのどうでもいい。チームの為だとか、誰それの為とか一回取っ払ってよ、ここまで来たんだ。好きに走ればいい」
『無責任すぎるだろ!加賀!』
「んじゃ」
そういうだけ言って加賀は雅にヘッドフォンを返す。雅もあすかも…そして横で聞いていたクレアも、小さくため息を吐きながらも楽しみになって居た。
「…ふざけんなよ…たく…」
当のアンリは、ぶつぶつと文句にも似たことを言いながらもふぅ…っと一つ息を吐けばまっすぐに視線を向けたのだった。
しかしそこから少しだけアンリの走りが無茶にもとれるような、しかし少しずつ新条との距離も縮まっていく。
「…クス…」
「乗り出したって所かしら」
「…ですね」
そう呟くクレアと雅。それでも加賀は涼しい顔をしてモニターを見ていた。
「…ッッ…」
ラスト二周の時、アンリが新条をオーバーテイクしていく。
「…やった!」
そして一足先にハヤトがチェッカーを受ける。そして二番手にアンリが受けることになった。