第36章 パンドラの箱
「本当は、よ?今日連れて行きたかった所あって…」
「城…?」
「そこでちゃんと買って、夜にもう一度ちゃんと言いたかった。でも、んなもの必要ねぇ…」
そういえば雅の膝の間にグッと片膝を入れ込んでソファに少し乗れば、加賀は雅の体を包み込んで耳元で話し出した。
「…このインディの最初の年のGP、無事に優勝したら俺と一緒になってほしい…」
「…それって…」
「まぁ、なんだ。…・・結婚…ていうかよ?いろいろ考えたんだけど結局上手く言えねぇな…」
「さっきの話…聞いてた?」
「あぁ。全部しっかりとな?」
「それでも私でいいの?家族にも見放されて…勘当と同じように…家族もなくなってるような…」
「なら俺が雅の家族になる。それじゃダメか?」
唐突の言葉だった。自分にとっても思い出したくもない過去…話せば嫌われるそんな過去…それを話しても加賀が受け入れてくれた…それだけではなく、家族になろうとまで言ってくれる…どう返事をしていいかわからなくなっていく雅の体を解放すれば加賀はそっと頬を包み込んで視線を合わせた。
「…嫌だとか…まだそういうのは考えてねぇっていうならはっきり言ってくれていい。…・・どう?」
「…ッッ…でも…」
「でもは聞いちゃいねぇよ。YESかNOか…どっちかだ」
「…私も…城と一緒に居たい…」
「YESでいいんだな?」
「…断る理由なんて…ないよ…」
「ならよかった。」
しかし、ゆっくりと顔を近づけた加賀のキスを拒む様に雅はすっと俯いてしまった。