• テキストサイズ

Winner【サイバーフォーミュラ・加賀】

第36章 パンドラの箱


「これ、話し終わるまで城に持っててもらいたい…もしかしたら返したくなくなるかもしれないから…」
「…どういう意味?」
「…あのね…私、人、殺したの…」

そういう雅の声はからからに乾いて、少しかすれていた。横に座る加賀の体は一切微動だにすることも無く、表情が変わることも無く、ただじっと雅の言葉に耳を傾けた。

「…直接的にっていうんじゃなくて…・・どうなのかな…って言うのは今でもあるの。原因は私だから…」
「…それで?」
「高校生の時ね付き合ってた彼がいたの。すごく優しくて、サッカー部で。無口なんだけど、少しだけ天然な感じ。でも、だからこそって言うので人気者だった。私と付き合ってるっていうのもすぐに知れ渡ったの。だけどその時には、私と付き合った時には彼には他に彼女がいたんだ…その彼女が私が奪った、たぶらかしたって周りに言いふらしていって…そんなつもりはなかった。告白されて、確かに好きだった。だからOKして…」

そこまで話せば、雅の声も少しずつ震えてくる。

「…その子と彼が付き合ってたのは誰も知らなかった。正確には、ほんの一部の子たち数人しか知らされてなくて…みんなが口止めっていうか…だから洩れなくて…でも後から私が付き合う様になって、その子自暴自棄になってって…隠れてお酒飲んで酔った時に交通事故で車にはねられて亡くなったの」

キュッと自身の手を握りしめて雅は俯いたまま話をつづけた。手はすでに冷たくなり、何も言わないで聞いてくれた加賀の存在が遠く感じて居た。

「……ハァ…」

小さく聞こえたため息。それが雅の意識を遠くに飛ばしていく。
/ 292ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp