第29章 初めてと、久しぶりの距離
『そういや…』と言いかけてリックは雅の顔を見つめた。その目は今までの陽気な雰囲気ではなく、真面目に変わっている。
「…それで?雅は?」
「え?…と、」
「何ができる?」
「出来る事っていうのは…」
「リック、雅は『城は黙ってて?』…ハァ…」
「私はメカニックとかでもないし…、でも、城君の走りのクセ、それとレースでのデータ取りでご一緒させていただけたらって思ってます。」
「実績は?」
「現場というか、サイバーのレースで1期半は一緒に回ってました。」
「城と一緒にってか?」
「いえ、城君とは違うチームでしたけど」
「ふぅん…それで、今年のインディからのレース取りって事?」
そういわれた雅はカチャン…とカトラリーを置く。
「…ごめん、少し離れます。」
「雅?」
「リックさん、でしたね…帰らないでください」
そう言い残して雅は席を立ち自身の部屋に向かう。それを見送った加賀達はくすくすと笑っていた。
「…あーぁあ、戦闘態勢だな、こりゃ」
「俺はそんな事も無いけど?これでマスコット的なら別に雅じゃなくてもシンディでもいいって思うだけだ。」
「なるほどな」
「余裕そうだな、城…」
「まぁな、雅が持ってくるものも大体予想は付く。」
「フィルはグレイと一緒にやってたってので俺も納得はしてる。でも、それ以外となれば信頼もあるからな…」
「…そりゃそうだ」
「なぁ、加賀、大丈夫か?」
そう聞くフィル。しかし加賀はニッと笑っていた。
「お前は見たんだろ?あいつのデータ」
「そりゃ…」
「大丈夫だ」
そう話しているところに雅はノートパソコンを持って戻ってきた。