第29章 初めてと、久しぶりの距離

「にしてもよ？戻ってきたらブリードに彼女出来てたってのは驚いたな」
「リック、俺はもうブリードじゃねぇ」
「へぇ？」

食事をする四人を見ながらもリックはどことなく嬉しそうに話をつづけた。

「…でも、恋人ねぇ、あの狼に」
「うるせぇよ。」
「雅、色々教えてやろうか？」
「あ、聞きたいかもしれない…」
「やめとけ」
「おーっと、止める権利はねぇだろ？」
「止めるだろうが。」
「んー？心配？俺と二人っきりでってのは」
「それ以外に理由あるか…」
「え、二人っきり…って…」
「何かあるって時にこいつと二人っきりになるな。いいな？」
「警戒しなくてもいいよ。雅。ま、ただ俺的には君みたいな子猫も試してみたいけど？」
「触れんな。一切！」
「じ、城君…？」
「雅は俺の女だ。触れるなっつってんだよ。」
「…？」
「ま、そういう事だ。リック、雅は諦めろ」
「なぁるほど…今回ばかりはマジって事か」
「だから…言ってんだろうが」
「分かったよ。そこまでぶれねぇのは初めてだな」
「…え、っと…」
「たく…」
「それでその虫よけって事か」

ちらりと笑いながらもリックもまた二人のリングを見ていた。

「…虫よけって…さっきフィルも言ってた…」
「お、やっぱそう思うよな」
「えぇ、しかもはめる指が指ですしね」
「だよなぁ…気が合うぜ！」
「はは」

しかしそう言われても加賀がリングを取ることはしなかった。

「…羨ましいんだろ？」
「…ぁ？」
「まぁ分からなくもねぇけど？」
「言ってくれるじゃねぇの」
「そういうお前はどうな訳？リック」
「めでたくフリーだ」
「ｸﾊ…だろうな」

そう話している二人の距離感に雅は嬉しそうに笑ってその光景を見ているのだった。