第29章 初めてと、久しぶりの距離
「お待たせしました」
そう言ってノートパソコンを広げればリックに見せていく。
「…もしこれ見てもらって必要ないならピットへの出入りをしません。納得してもらえるだけのデータ量を取れるようになるまでは…」
「てか、これだけの情報量か…」
「もういいだろ、リック、こいつのメインは俺じゃなかった。しっかりとメイン取った上でそれだ。」
「…じゃぁそのメインとやらは?」
「他言、一切しないと約束してくれますか?」
「あぁ、てか他言しても俺は城以外のドライバーにゃあんまり興味はねぇよ」
「そっか…」
そう返事をすれば雅はするっとパソコンの画面を開きなおしてリックに提示した。
「…これって…スゴウに居たって事か?」
「はい」
「でも、このドライバー名…風見じゃないな…」
「セカンドドライバーのアンリ・クレイトー付きでしたので」
「確か、14回のチャンピオンか…」
「第13回です」
「…そりゃ失礼…」
そう言ってじっと見入るリック。雅は緊張などは一切している様子ではなかった。
「…了解。これを城でやってくれるって事だろ?」
「はい」
「悪かったな、極秘情報だろうに。」
「いえ、」
「んじゃ、よろしく!」
そこでようやくホッとした雅。
「…でもよ?アンリって、場所が悪いよな」
「え?」
「ずっとカートでやってて?入ったのが王者常連のスゴウだもんな。自分の走りもうまく表現できねぇだろうに」
「…あの…」
「得手不得手も書き留められて、あとはメインとしては城のモチベ上げか」
「モ、チベあげって…」
「そりゃ、シンディじゃ真似できねぇわ。」
くしゃりと頭をなでるリックと突然のことで驚く雅。
「…ッッリックさん…」
「リックでいい」
そう笑いながら、時間は過ぎていく。帰るとなったリックをそこまで見送ると加賀は一緒にホテルを出ていった。