第4章 2人きりの時間
それからは雅にとって夢のような時間だった。あの加賀が横にいる。それだけでもう他には何も望まなくていい位だった。
「…あの、加賀さんって…」
「ん?」
「恋人とかいるんですか?」
「恋人かぁ…気になる?」
「え、あ…そりゃいたらこんな風に二人きりでお出かけとか申し訳ないなって思って…」
「逆を言えばいたらこんな風にはでかけねぇよって事だ」
「…え?」
「なぁんか、他に聞きたいことたくさんありますって顔だな」
見透かしたように加賀は雅の顔を覗き込む様にしてニッと笑った。
「…聞いてもいいんですか?」
「応えれることならなぁ?」
ふわりと答えるその言葉は拒否という形は一切なかった。
「…あの、誕生日って…いつですか?」
「4月1日」
「…趣味って…」
「ワックスがけとか?」
「ワックス…」
「バイクが基本だからなぁ…」
「バイク乗るんですか?」
「あぁ。意外?」
「はい…あ、でも風見さんもバイクが多いって言ってたし…最近は車も多いみたいだけど…」
「そっか。」
「風見君とは、長いんですか?」
「どうだろうなぁ…あいつ、ハヤトとはアメリカであって、インディーズの賞金レースが初めてだったからなぁ」
「インディーズ…賞金レース…?」
雅にとっては知らないことばかりが一気に情報として押し寄せてくる。それからAOIに入るきっかけになったことも話した加賀。
「そうだったんだ…」
「だからこそ、今ミキちゃんとラブラブなんだろうけど?」
最後は笑い話に変えていた。