第28章 幸せな時間
配達を頼み、到着日に組み立ててもらう事にもした。
「よかったな。全部とりあえず決まって。」
「ん!ありがと…」
「…まだ気にしてんのか?払えねぇって…」
「…ん、少し…」
時計を見れば少しは時間があることが分かったものの、先にホテルに戻ることにした加賀。
部屋に戻ればボスっとベッドに座る雅を見て、声をかけた。
「疲れたか?」
「ううん?楽しかったし!」
「明日も少し回るけど、…その前に渡したいもんがあんだけど…」
「え?何々?」
どことなく嬉しそうに加賀の背中に声をかける雅。立ち上がろうとした時、『ちょっと待って』と止められた。
「…何よぉ…」
「……まぁ待てって…」
鞄の中から小さな箱を取り出せば雅の横に座る。
「手、出して?」
「手?」
「ん」
そっと両手を出せば雅のその手に小さなベルベット調の箱が乗せられた。
「…えと…これって…」
「開けてみ?」
「…待って…、え、」
ゆっくりと開ければそこには二本のリングが入っていた。
「…ッッ」
「買ったのは正直随分前。本当はクリスマスに渡そうと思ってた。でもまだグランプリにもなってねぇし、渡せねぇなって思ってた。いざ決まった所で渡すきっかけっつぅか…解んなくなっちまってな…」
「…ッッ…そんな前…ッ」
「多分、サイズは大丈夫だと思う。」
「…じょぉ…くん…」
「ほら、泣いてんじゃねぇって…それに黙って用意しちまったからよ、サイズもデザインも気に入るか…ッ」
言い終わるが早いか雅は加賀の首に巻き付いた。
「…雅?」
「あ、りがと…ありがと…」
「いいって、んで、付けてみてくれねぇかな」