第28章 幸せな時間
「悪いな、待たせちまった!」
「大丈夫。」
「どうした?んな不機嫌で」
「ザガットに会った。」
「あー、なるほどな。それで雅の事『嬢ちゃん』って言われたって事か」
「グレイ、なんでわかるの?」
「やっぱな。じゃなきゃ城が不機嫌になんる理由がねぇ」
「中、入るか?」
「だな」
しかしその理由がよくわからないフィルと雅。そのまま店内に入れば雅を奥に座らせて隣に加賀、そして向いにグレイとフィルが座る。
「…いろんなのある…おいしそう」
「ここのサンドイッチは最高だぜ?」
「そうなんだ」
「ま、食ってみりゃわかるよ。」
そう話して注文も決めていく。雅は加賀に問いかける。
「ねぇ城君…」
「ん?」
「他の人も色々いるんだよね、なじめるかな」
「無理になじもうとしなくてもいい。でも、俺らのチームのメンツには慣れてくれると助かる。」
「それはもちろん!挨拶しないとね…」
「その事だが城?」
「ん?」
「リックは残ってくれる。ただメルバは…」
「そうか…」
「いや、他に行ったとかじゃなくて、消息が分からねぇって。」
「ま、どっちにしても集まらねぇなら仕方ねぇだろ。つか、メカニック三人いりゃなんとでもなる。」
「てか、実質四人分だしね」
そうフィルが笑って話す。フッと口元が緩む加賀。確かにグレイが居れば一人で二分の仕事をするのは解っている。だからだろう。加賀に焦りの影も全く見えなかった。
「…って事は、城君とグレイ、フィル、そのリックさんの四人って事だね」
「…ちげぇよ。」
「え?だって…」
何度も考えながら指を立て数える雅。ニッと笑いながらも三人は口をそろえる様に話し出す。
「雅がいるだろ」
「…ッッ」
「城のモチベーションを上げるのに必要な存在だ。」
「ない事にしてもらっちゃ困る。」
「…・・雅がいないなら走る意味もねぇよ」
最後に放つ加賀の言葉に雅は俯いてしまった。