第27章 新しい新境地
フライト時間も十二時間を超えたころ、フッと目を覚ましたフィルは通路を挟んだ先の雅がいない事に気づいた。
「…雅?」
しかし加賀の横にも、近くの席にもいない。一旦トイレに…と向かった先、後方の席に雅の姿があった。
「…何してんの?」
「え、あ、フィル…」
「ここ、席違うじゃん?」
「そうなんだけど、なんか二、三時間で目覚めちゃって…CAさんに相談したら空いてる席でどうぞって…」
「それで…で、何…」
手元に映るノートパソコンの画面を見ればフィルは驚いた。
「…それって…」
「ん、今までのレースのクセ…かな…城君の」
「癖って…」
「まぁ、凰呀マシンでのだから今後あんまり意味ないかもしれないんだけど…」
小さく笑いながらもトイレに向かうフィル。そして戻ってくれば横に座った。
「…で?加賀のクセってやっぱ強い?」
「ストレートで攻めすぎな癖があって、それが次ヘアピンだとかって言っても攻め込みすぎる。しかもぎりっぎりまでね…それでいて曲がるときに一気にブレーキ踏んで2速くらいまでに落として回って再加速」
「マシンに負担でしかないやつだな」
「そうそう。」
「…で?これって…いつからの?」
「それは秘密」
「は?なんで」
「絶対ひかれるから」
「…そうか?」
「城君に秘密にしてくれる?」
「加賀は知らないの?」
「ん」
「…まぁ、それくらいなら。」
「前のGP全戦分」
「…マジ?」
「ほんと…」
そう言い合えばフィルは少し驚いた状態だった。
「…でも、雅アンリのレースとかも分析…」
「してるよ?それ本職だから」
「前からなんかそういうのしてた?」
「こんなレース分析なんか初めてだよ…」
「それで良く出来るな」
「なんていうか…じっと見てるとアレ?って気づいたりとか…それくらいの事をまとめただけだし…」
「それが地味にすごいっての」
そうフィルは笑っていた。